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社長が気づいていない“小さなムダ”が会社を弱くする
「みんな毎日忙しく働いているのに、なぜか会社に余裕が出ない」
そんなふうに感じることはないでしょうか。
売上が極端に落ちているわけでもない。
大きなトラブルが続いているわけでもない。
それでも、なぜかバタバタしている。人が足りない感じがする。利益も思ったほど残らない。
そういう会社には、目立たないけれど、じわじわと効いてくる“小さなムダ”が積み重なっていることが少なくありません。
たとえば、同じことを何度も確認している。
誰かに聞かないと進められない。
紙に書いたものを、あとでまたパソコンに入れ直している。
資料を探すのに毎回時間がかかる。
会議をしたのに、結局何も決まっていない。
一つひとつは大したことがないように見えても、こういう小さなムダは、毎日の仕事の中で静かに会社の体力を削っていきます。
大きな問題は、誰でも気づきます。
でも、小さなムダは、毎日やっているうちに「そんなものだ」と思ってしまう。
現場も慣れてしまうし、管理する側も見過ごしやすい。
だからこそ、気づかないまま残りやすいのだと思います。
私は、会社を弱くするのは、大きな失敗だけではないと思っています。
むしろ、こういう小さなムダを放置することのほうが、あとからじわじわ効いてくることがある。
なぜなら、大きな問題は対策しますが、小さなムダは「今すぐ困るわけではない」と後回しになりやすいからです。
ある公的な業務改善ガイドラインでも、組織文化を変えるためには、経営者自身が問題に気づき、自ら先頭に立って現場と対話していく必要があるとされています。
つまり、現場任せにしていても、小さなムダはなかなかなくならないということです。
実際、現場にいる人ほど、そのやり方に慣れてしまっています。
毎日やっていることなので、「これが普通」と思っている。
でも、少し引いて見ると、そこに二度手間や待ち時間や、なくてもいい確認作業がたくさん隠れていることがあります。
経営者の役割は、数字を見ることだけではなく、会社の中で当たり前になっている非効率に気づくことでもあるのだと思います。
ある大手通信系の研究でも、業務改善やRPA導入を進めるうえで、現場へのヒアリングだけでは主観に偏りやすく、客観的・定量的な分析が必要だと整理されています。
つまり、「忙しいです」「大変です」という感覚だけではなく、実際にどこで時間がかかっているのか、どこに問題のある作業があるのかを見えるようにしないと、本当の改善にはつながりにくいということです。
また、ある業務改善系の解説でも、業務プロセスが見えていない状態では、実際には必要のない工程が残っていたり、ボトルネックや属人化が放置されたりして、生産性を下げると説明されています。
見えていないものは、改善しようがありません。
だからこそ、ムダを減らす第一歩は、まず“見えるようにすること”なのだと思います。
小さなムダは、たとえばこんな形で会社の中にあります。
「この件、誰に確認すればいいのか分からない」
「前にも同じ説明をした気がする」
「毎回ファイル名が違って探せない」
「一人しか分からないから、その人がいないと止まる」
「念のためで確認しているけれど、本当に必要かは分からない」
こういうものは、一回一回のロスは小さくても、人数と日数がかかると、かなり大きな時間になります。
たとえば、一人あたり一日5分のムダでも、10人いれば1日50分です。
それが20日続けば、月に約1,000分、時間にすると16時間以上になります。
しかも実際には、5分どころでは済まないムダも多いはずです。
こう考えると、「小さいから大丈夫」とは言えないと思います。
そして厄介なのは、小さなムダほど、頑張る人が吸収してしまうことです。
できる人、気がつく人、責任感の強い人ほど、自分で何とかしてしまう。
自分で調べる。自分で埋める。自分でフォローする。
その結果、会社としては問題が表に出にくくなります。
でも実際には、その人たちの負担だけが増えていき、やがて疲弊や不満につながっていく。
これは会社にとって、かなり危ない状態だと思います。
経営者として大事なのは、現場に「もっと頑張れ」と言うことではなく、頑張らなくても回る部分を増やしていくことではないでしょうか。
同じ仕事量でも、ムダが少なければ、人はもっと余裕を持てます。
余裕があれば、対応も丁寧になりますし、ミスも減りますし、次の改善を考える力も生まれます。
逆に、ムダが多いままでは、毎日を回すだけで精一杯になってしまいます。
だから私は、社長が見るべきものは、大きな数字や派手な問題だけではないと思っています。
現場の空気の中にある「なんとなく面倒」「毎回少しずつ時間がかかる」「これ、前から非効率だよな」という声にならない違和感。
そこに目を向けられるかどうかで、会社の強さは変わってくるはずです。
会社を良くするというと、大きな改革や新しい仕組みを思い浮かべがちです。
もちろんそれも大事です。
でも実際には、会社を弱くしている原因の多くは、もっと地味なところにあります。
小さな確認。小さな待ち時間。小さな手戻り。小さな遠回り。
そういうものを一つずつ減らしていくことが、結果として強い会社につながっていくのだと思います。
社長が気づいていない小さなムダは、ただのムダではありません。
それは、会社の利益を削り、人の余裕を奪い、成長のスピードを落としていく“見えにくい弱さ”です。
だからこそ、まずは「大きな問題がないから大丈夫」ではなく、小さなムダが当たり前になっていないかを見ることが、経営には大事なのだと思います。
会社を弱くするのは大きな失敗だけではなく、見過ごされた小さなムダの積み重ねなのだと思います。